Pierre-Laurent Aimard, Aka Pygmies "African Rhythms" (2003)


クラシック音楽は、つねに「辺境」(あくまで、ヨーロッパから見て、ですが)の音楽に刺激を受けて進化してきたところがあります。たとえば、トルコの軍楽に影響を受けてモーツァルトトルコ行進曲を作ったわけだし、バルトークコダーイハンガリー民謡を題材にした音楽を作曲しています。20世紀には、リゲティライヒといった現代音楽の作曲家が、アフリカのポリリズム(異なるリズムを同時に演奏する)に影響を受けた作品を発表しています。
このアルバムは、リゲティライヒの音楽と、そのインスピレーションの源といえるアフリカ音楽とを交互に収録したユニークな一枚です。現代音楽の方の演奏はフランスのピアニスト、ピエール=ロラン・エマール。アフリカのポリフォニーを演奏するのは中央アフリカのアカ族(ピグミー)たち。西洋音楽とはまったく異なった原理にのっとったアカ族のポリフォニーは非常に高度で、聴いていると、アカ族の音楽の方が現代音楽よりよっぽど豊かな音楽性があるように感じられてくるのがなんとも皮肉な感じがします。
動画はこのアルバムの2曲目に収められているスティーヴ・ライヒの「クラッピング・ミュージック」(1972)。手拍子だけで構成された音楽で、二人の奏者が同じパターンのリズムを繰り返しているうちに、だんだんと位相がずれていくという作品です。