Tinariwen "Aman Iman" (2007)


ジャケットの男イブラヒムの鋭い眼光からしてすでにただ者じゃない感じが漂ってくるのですが、このバンド、確かにただ者じゃありません。
彼らの出自は、サハラ砂漠遊牧民として生活していたトゥアレグ人です。植民地政策と国家形成により分断され、国家なき民族となったトゥアレグ人たちを招き、革命戦士を育てようとしたのが、70年代に「サハラ共和国」構想を打ち立てていたリビアカダフィ大佐でした。このリビアのキャンプでボブ・ディランボブ・マーリーなどの欧米音楽に触れた若者たちが、1980年前後に結成したバンドがティナリウェンなのです。
こうした出自からも明らかなように、ティナリウェンの音楽は、これまで聴いてきたマリ音楽(「マリ」のタグからどうぞ)の柔らかさとは全然違った、いかにも「砂漠の音楽」といったストイックさに満ちています。彼らはトゥアレグ人の母語タマシェク語で社会の矛盾を歌い、トゥアレグとマリ政府軍が衝突した90年代には若者たちの絶大な支持を得て反政府運動の象徴となったとのこと。いわば革命と反抗の音楽なのです。使われているのも、伝統楽器ではなくロックで使われるエレキギター
とはいえ別にそんなに堅苦しい音楽というわけではなく、手拍子や女声の合いの手、津軽三味線を思わせるギターのメロディなど、どこか日本の民謡に似たところも。伝統と反体制がないまぜとなった、非常に生々しい音楽です。
動画はアルバム1曲目の"Cler Achel"。

http://www.myspace.com/tinariwen