Llangres "Esnalar" (2005)


ケルトというとアイルランドやイギリスを思い浮かべがちですが、スペインのガリシア地方とアストゥーリアス地方にはかつてケルト人が定住していて、いくつかの遺跡も残されています。また、今でも「ガイタ」と呼ばれるバグパイプが伝わっており、スコットランドケルト文化との共通性を感じさせるものがあります。そしてガリシアの伝統音楽として、ケルト音楽を演奏するバンドも、いくつもあるのです。今回紹介するLlangresもそのひとつで、アストゥーリアス地方のケルト音楽バンドです。"Esnalar"は2ndアルバムになります。
ただ、本当に彼らの演奏するケルト音楽がガリシア、アストゥーリアスの伝統なのかというと、これはかなり疑問があります。このアルバムを聴いても感じるのですが、あまりにもアイルランドやイギリスの音楽そっくりすぎるのです。ガリシア、アストゥーリアスのケルト人は2千年も前にローマ人と同化したのに、音楽がこんなに似ているということがあり得るのでしょうか? だいたいアイルランドの伝統音楽自体、そこまでの歴史があるとは思えません。
おそらくこれは「俺たちはケルトなんだ」という民族意識の高まりとともに作られた文化であり伝統なのでしょう。実際、ガリシア自治州の知事自身が「ケルト文化の存在」に疑問を唱えたというニュースもありました。
むろんすべての民族音楽は、国家や民族の結束を固めるために利用されたり、観光用にアレンジされたり、さらには西洋ポピュラー音楽の影響を受けたりして時々刻々と変化していきます。それが生きた音楽というものです。
そして作られたものであれ古いものであれ、音楽としては演奏がよければそれでいいわけです。

http://www.myspace.com/llangresmusic