SACRA "ついのすみか" (1991)


これまでこのブログでは「必ず試聴できること(可能な限りYouTubeに動画があること)」を条件に世界の音楽を紹介してきたのだけれども、今回に限りその掟を破ります。試聴サイトはありません。申し訳ない。
このアルバム、私が世界の民族音楽を聴き始めた頃に聴いて心惹かれたアルバムで、今でもたいへん気に入ってときどき聴いている作品なのです。
歌われている曲は韓国や中国、インドネシアなどアジアの民謡をアレンジしたもので、歌詞の舞台となっているのもモンゴルやチベット雲南などアジアの内陸部。エキゾチックな異国を舞台にした童謡のような曲を、透明感のある優しい声の女性ボーカルが歌っていて、たいへんさわやかなアルバムになっています。
ただ、よく歌詞を聴いてみるとわかってくるのは、アルバム全体のテーマが「死」だということ。ボーカルの小畑香さんは「ヒマラヤの山の上骨をうずめに行こう」とか「うれしいな涅槃は近い」といった歌詞を子供のように無邪気に歌っているし、だいたいアルバムタイトルからして「ついのすみか」。とはいっても死といってイメージするような暗さはまったくなくて、東洋的な涅槃とはこんなところなんじゃないかと思うような伸びやかで清澄な音楽なのです。
残念ながらsacraのアルバムはこれ一枚しかなく、素敵な小畑香さんの歌声もこのアルバムでしか聴けません。このアルバムもとっくに廃盤になっていますが、私同様このアルバムを大切に思っている人は少数ながらいるらしく、ヤフオクなどでは高値で取り引きされているようです。