Love Spirals Downwards "Ardor" (1994)


ギターやシンセの奏でる美しい音に乗って、儚げな声のボーカルが歌うメロウなメロディ。浮遊感のあるたいへん心地よい音楽で、分類すればDream PopとかEthereal Darkwaveとかいうジャンルに入るらしいです。メンバーは、マルチ・プレイヤーのライアン・ラムとボーカルのスザンヌ・ペリー。
この種の耽美的な音楽だと、ケルト音楽であったり教会音楽であったりと民族的なルーツをたどれる音楽が多いんですが、このバンドの場合は民族的要素はまったくといっていいほど感じられず、地に足がついていないというか、空虚で無機質な印象があるのが特徴です。言葉が矛盾しているけれども、いわば「無宗教の天国の音楽」といった感じがします。あるいは、ユニット名の頭文字が象徴しているように、ケミカルで消毒済みの天国。かすかな死の香りといってもいいかもしれません。
最近、私は寝るときにこのアルバムをかすかな音量でよく聴いております。安らかな眠りにつけますよ。それはもう死のように。