maléfices "Deux Demis" (1995)


マレフィスを知っていますか?
メンバーは、ボーカルと作詞を担当する北上リュンヌと、作曲、ギター、プログラミングを担当する鴨志田琢の2人。北上リュンヌは幼少期から日本とフランスを行ったり来たりしながら育ち、鴨志田琢もまた東京、カイロ、パリと転々として育ったという経歴の持ち主。二人はパリの大学在学中に知り合って音楽活動を始めたとのこと。その音楽は日本人離れしていて、エスニック風でもありフレンチポップ風でもある不思議なサウンド。さらにボーカルのリュンヌ嬢はフランス語、英語、日本語を駆使して、ときには優しく、ときにはエキセントリックに、表現力豊かな歌声を聴かせてくれます。どの国の音楽ともいえないけれど、決して寄せ集めというのではなく、迷いのないしっかりとした芯のある音楽。タイプは全然違いますが、以前紹介したカーボベルデマイラ・アンドラーデなどと同じような、漂泊者の音楽といっていいでしょう。当時もほかのどこでも聴いたことがない音だったし、いまだに彼らに似たバンドは思い浮かびません。
私は1995年ごろ、たまたま彼らの"Granada"という曲を聴いて、たちまちその不思議なサウンドと歌声のファンになったのですが、ミニアルバムが2枚とフルアルバムが1枚出たところで、ふっつりと消息を聞かなくなってしまいました。
あとで知ったところによると、彼らは日本の音楽業界と水が合わず、わずか2年弱ですっぱりと音楽活動をやめてしまっていたのだとか。その後ふたりの行方は知れないのですが、彼らを知っている方によれば、「得意のフランス語を活かしつつ庭付きのメゾネットで優雅に暮らしている」とのことなので、音楽は離れても元気で過ごしているのでしょう。また、ボーカルの北上リュンヌさんのお兄さんである北上リグ氏は、フランス大使館職員として働いていていて、目黒区長選にも立候補したことがあるみたいです。
おそらくもうマレフィスの復活は期待できないのだろうけれども、忘れられるには惜しい唯一無二のユニットでした。
当時の彼らを知る方がマレフィスのサイトを作っていて、試聴もできるのでぜひ聴いてみてください。
http://www.kyo.com/malefices/Discog/Discog-j.html