Israel Kamakawiwo'ole "Facing Future" (1993)


「イズ」の愛称で今なおハワイの人々に愛されている歌手イズラエル・カマカヴィヴォオレが亡くなったのは1997年6月のこと。38歳の若さでした。
体重は340kg。間違いなくジャンルを問わず世界でいちばん巨大な歌手でしょう。その体型から相撲取りに親近感を持っていたのか、「天国から雷」や「ヨコヅナ」といったハワイ力士を歌ったユーモラスな歌もあります。極度の肥満が心臓に負担をかけ彼の命を縮めたのは明らかですが、神話的ともいえるその巨体から発せられるのは、繊細で優しく、包み込むような歌声。その後もいくつかのハワイアンのアルバムを聴いてきたけれど、彼のように歌う歌手はほかには誰一人としていません。まさに不世出のハワイアン・シンガーといっていいでしょう。
そして、そのイズの最高傑作が93年のこのアルバム。特に、「ジョー・ブラックによろしく」「小説家を見つけたら「ER」など今なお多くの映画やテレビで使われている"Somewhere Over the Rainbow/What a Wonderful World"から、「奪われた土地」であるハワイの歴史を鮮烈に歌ったプロテスト・ソング"Hawai'i '78"への流れは何度聴いても涙が出るほどに素晴らしいです。
動画はあえて有名な"Somewhere Over the Rainbow"ではなく"Hawai'i '78"を。彼のハワイへの愛がもっとも印象深く表現された曲なので。