Sa Dingding(薩頂頂) "Alive"(万物生) (2007)


これまで紹介してきたアーティストの中で、たぶんいちばん有名なのがこのSa Dingding。デビューアルバム"Alive"が昨年ユニバーサルミュージックから全世界で発売され、注目を浴びている中国の歌姫であります。
Sa Dingdingは1984年生まれ。内蒙古人の母親と漢人の父親の間に生まれ、サンスクリット語チベット仏教など中国のマイノリティ文化に興味を持ってきたという彼女が歌うのは、中国の民族音楽とエレクトロニック・ミュージックのミクスチュア。使う言語もさまざまで、中国語、チベット語サンスクリット語、さらにはself-created language(笑)まで駆使して歌っております。
悪くないです。むしろ聴いていて心地いいと感じました。でも、どうしても手放しで好きと言いきれないのは、ジャケットの写真といい音作りといい、いかにも西洋人が好みそうなオリエンタリズムを強調しすぎているから。西洋人の思い描く「東洋の神秘」を演じて見せているようにもみえます。世界のマーケットを狙うためにはこうするしかなかったんでしょうか。また、「癒し」とか「スピリチュアル」とかそういう文脈にすっぽりとはまってしまいそうなところもひっかかります。
昨日紹介したTonolecをよいと感じてSa Dingdingにひっかかりを覚えるのがどうしてなのか自分でもうまく言語化できないんですが。
チベット仏教をモチーフにして歌う彼女が、中国の歌手として世界に発信されていることにも、何か政治的意図を疑ってしまうのはちょっと勘ぐりすぎでしょうか。
次は世界を狙った音楽じゃなく、できれば彼女の等身大の音楽が聴いてみたいところなのだけれど、それにはたぶん彼女がもっと成熟するまで待たなければいけないんでしょうね。でも、今の中国で自分の音楽を貫くことができるかな。
以下のサイトで試聴ができます。
http://www.myspace.com/dingdingsa