Mayra Andrade "Navega" (2007)


カーボベルデといわれても、日本との関わりは薄いし、観光で行くようなところでもないし、正直言ってどこにあるのかもはっきりとは知らなかったような国なんですが、これが音楽的にはなかなか興味深いところらしいのです。
カーボベルデは、大西洋の北、アフリカの西沖合いに浮かぶ10以上の島々からなる島国。もともとはポルトガル領で、16世紀には奴隷貿易の中継地として繁栄していたのだとか。奴隷貿易が衰退したあとも、長らくカリブ海やブラジルへの航海の補給基地として発展、独立運動の末1975年にポルトガルから独立したばかり――という国だそうです。こうした歴史を経てきたカーボベルデでは、南米音楽ともヨーロッパ音楽とも違う独特の音楽が発達したのだとか。
そのカーボベルデ音楽の新星として注目されているのがマイラ・アンドラーデ。1985年、カーボベルデ人の両親の間にキューバハバナで生まれ、カーボベルデセネガルアンゴラ、ドイツ、フランスと絶えず移り住んできたという生まれながらの多国籍者です。
彼女が歌うのは、カーボベルデという土地の歴史と彼女自身の遍歴を反映したかのように、南米の音楽をベースに、ヨーロッパとアフリカの要素を溶かし込んだような音楽。ポルトガル語がもとになったクレオール語で歌われています。つまりこれがカーボベルデの音楽なんでしょうか。ボサノヴァのけだるさとファドの哀感が一体になったような心地よい浮遊感がたまりません。ちょっとかすれぎみの歌声も素敵。夏の昼下がりあたりにぼんやりと聴くのがお薦め。いいアルバムです。
公式サイト
http://www.mayra-andrade.com/index.htm
動画は"Regaco"という曲。背景にはカーボベルデの風景が映っています。